プロジェクトリーダー、
ビジョナリーリーダーより

山本 耕志
東京藝術大学COI拠点
プロジェクトリーダー
株式会社 JVCケンウッド
山本 耕志

藝大COIの成果を社会インパクトへ

本拠点は、美術・音楽・映像・身体表現という芸術表現を培う東京藝術大学を中核機関とし、五感を刺激する「感動」の創出・普及に携わる企業群との産学連携体制を構築。「芸術と科学技術の異分野融合」によって文化と心を育むコンテンツを開発し、社会実装することによって、イノベーションを継続的に創出するノウハウ、機能を獲得。これらを基盤としたイノベーション創出拠点を大学に構築することを目的に活動を行いました。

藝大COI拠点の意義については、社会・科学技術・企業(参画機関)・本学(藝大)の4つの視点で捉えることができます。
社会にとっては、多くの人々が芸術へアクセスし感動体験を得られるような社会インフラとしての芸術のあり方を提示しました。美術館や音楽ホールにとどまらず、企業と連携した街づくり、学校への教材提供、医療機関への芸術の活用、海外への独自活動の展開など、様々な領域への芸術の展開に取り組みました。
科学技術にとっては、その発展や社会実装には芸術の人間起点の感動や幸福の視点が欠かせないことを示しました。多くの技術系大学や企業が技術の活用、すなわちニーズ創出に苦労しますが、感動や人間性、生きる喜びなど芸術視点が解決の助けになります。一方で
芸術の有する可能性を社会価値に変換するには科学技術が必要ですので、芸術と科学技術が補完し合うことで各々の価値がよりスケールアウトされます。
企業(参画機関)にとっては、本質的な目的の追求や、新しい観点や発想による技術の用途開発を通じたイノベーションに芸術の要素が有効です。デザイン思考やアート思考、パーパスドリブン、ビジョンドリブンなどのアプローチが注目されていますが、いずれも個の内発的動機や、社会や人への共感、真善美への洞察などが欠かせません。全体を直観的に捉える感性とビジョンを描く想像力、異質なものを統合する構想力・創造力などが、それらを具現化する企業のリソースと融合することで革新的なイノベーションにつながります。
本学(藝大)にとっては、芸術の社会価値の可能性を再認識し、産学連携のインパクトを経験しその知見に触れ、主体的に推進しようという意識変革が大きな成果でした。

研究から社会実装を具体化するために、産学連携だからこそ提供される企業の研究支援、ノウハウ、販路の提供を受けることができた結果、大学では十分に仕組み化されていなかった機能(社会ニーズの洞察、知的財産獲得、契約実務、事業化ノウハウ、デジタルマーケティング等)の必要性が深く理解されました。今後、藝大が芸術におけるイノベーション拠点となるためにCOIの実績を踏まえ、産学連携を成功させるための、異分野融合、互いのレスペクトをもって新たな創造につながり、藝大COI拠点が生み出した成果が、今後の社会の発展と豊かさに寄与することを願います。

小池 聡氏
COIビジョン2 「豊かな生活環境 の構築(繁栄し、尊敬される国へ)」
ビジョナリーリーダー
ベジタリア株式会社
代表取締役社⻑
小池 聡氏

芸術と科学の融合を実証

現代社会は、物質的な「モノの豊かさ」だけではなく、経験価値を 高める「コト」と「こころ」が調和した「こころの豊かさ」を求める 時代になってきています。特に「豊かな生活環境の構築」を目指す Vision2に於いては、芸術と科学を融合させ、多様なイノベーション 創出を目指す藝大拠点は重要な位置付けでした。
芸術の世界はデジタルの「0か1」の世界ではないため、芸術と 科学の融合は極めて困難な創造的試行であると考えられていましたが 藝大拠点のさまざまな活動は多くの社会実装に繋がりました。また、 コロナ禍で「バーチャル藝祭」をスピーディーに企画・実施できたの も変化に柔軟に対応してきた藝大拠点ならではの特徴と価値だと思っ ています。COI他拠点との連携も進み、科学と芸術は相互に排他的で はなく、互いに補完し合うものだということが実証できてきたと思い ます。
近年は経営もアート、サイエンス、クラフトの必要性が注目されているように、ポストコロナのニューノーマルの時代には、世界の流れは芸術と科学の融合へと確実に向かっています。藝大が日本の「芸術と科学の融合」の騎手として、他の芸術系大学なども牽引し、世界に発信し続けることを期待します。