日比野 克彦

社会を変えるアートの力

教授/美術学部長・美術研究科長 日比野 克彦
教授/美術学部長・美術研究科長
日比野 克彦

写真はクローズアップ藝大より
(撮影:新津保建秀)

 これまでアート(芸術)が果たす役割は、専門性に特化した限られた人や関係者に対する限定的なものあったが、今後は社会的な課題解決の役割も担うことになるだろう。COIの取り組みにより、社会的課題に藝大全体で取り組む体制が一歩進んだように思う。
 美術であれ音楽であれ、藝大では「人間の根っこのところ=人間の生きる力(生命の熱量)」をどう表現するか、また共有するかを考え研究している。一方、社会は多様性に富んでいていろいろな専門家や多彩な人々が関わっている。芸術と社会をいかに接続するかがこれからキーとなるであろう。アートには、今日ある地球規模の課題解決に向けて行動変容を促す力もあるように思う。いろいろな場面で、日本に限らず世界に影響を及ぼす力が、アートには、藝大にはあると考えている。
 科学技術はわからないことを数式や数値で表現し代々継承することで発展させてきたが、芸術はわからないことをそのまま受け入れ、何もないところから発展させ作品にする。数万年前にアートが及ぼした力、すなわち、人間の生きる力や生活・活動を快適にするということに、今後も芸術の出番があり、この本質を受け継いでいこうと考えている。